Wanna Whole Lotta Love
19歳の頃だったか、バイト先で清司君と出会った。
その頃私は流行らないIVYファッション、彼はロン毛に革のレタリングの施されたジャンパー、ボトムの広がったGパンになんとロンドンブーツという出立で現れた。
住む世界が違いすぎ…そう思っていた。
何日かシフトが同じになって、閉店して帰る間際、彼は私に近づいてこう囁いた。
『アライ、ニールヤング好きなん?』
『え?あ、まぁ…』
『帰り、茶行けへん?』
『うん、ええよ』
というわけで梅地下で唯一開いてる茶店に行った。
話し始めるなり二人は気が合った。
あっという間に私の終電の時間になり、彼は元町にある自室に私を誘った。
一晩中音楽の話をした。
彼は今思えばGrecoのサンバーストのレスポールを左に抱え、天国への階段やホール・ロッタ・ラブのイントロを聴かせてくれた。
『アライ、ビートルズ好き?』
『うん、好きやで』
『じゃ、これ』とブラックバードや、イエスタディ、ヒア・カムズ・ザ・サンなんかのアコースティックナンバーのタブ譜を貸してくれた。
弾けるようになったら返して…。
それが私と清司の『出会い』であり、ギターへの第一歩だった。
レスポールで弾いてくれた数々のイントロが私を刺激した。
色々あって、50歳過ぎて彼とは連絡が取れなくなってしまった。
今でもどこかで同じ音楽を聴いてくれていたら嬉しい。
別れてしまう前、セッションした。
彼は私の弾く『Tears In Heaven』の出だしのハンマリングとシンコペーションができなくて結局そこだけでセッションは終わってしまった。
一緒に音楽をしたかった男である。
アコギ2本で天国への階段をしたら面白かったに違いない。
あ、でもこの二人ではボーカルが居ないぞ…などと夢想してしまう。
清司に会いたい。
Youve been learnin baby, I bean learnin
All them good times baby, baby I've been yearnin,
Way, way down inside honey, you need it,
Im gonna give you my love
Wonana Whole Lotta Love