此処ぞ!
木曜日、ある中学生と話した。
ほんの20分ほどだったが、とても意味深い時間だった。
この子は出会ってからほぼイメージ通りに育ってくれている。
ただ、中1の途中で一度だけこの子を文字通り烈火のごとく叱りつけたことがある。
楽な方に流れてゆきそうだったからである。
信頼関係が揺らいでいた時だけに、それは一発勝負の賭けだった。
勝負の神は私に微笑んだようだ。
いや、私になのか?
結果、私のイメージ通りになっただけで、実は彼のためになったのか…!
その彼が私の塾に来てくれている。
幾ばくかの月日が経過し、そろそろ二人でじっくり話してみたいなと思っていたところだった。授業が終わり、帰り支度を始めさせたが、彼だけはしていない。
ん?帰る気ない?
彼の顔を見て、ピンときた。
他の子を見送って席にもだった私は、“何かあった?”と切り出した。
その答えは予想通りであった。
ここにきて自分が見てきた風景は正しいのかどうか確認したかったのだろう。
私はこの子の感性にほとほと感心させられる。
こちらも伝えたいことが二つ、三つあった。
順序だてて、話していった。
とてもじゃないが中学生とは思えないその理解力。
私はこういう子と出会えてほんとに幸せである。
塾というのは自分を変えるところであってほしい。
そう思って開いているのだけれど、実は他人のために、塾のために…と思ってくれる子ほど自分を変えていくのである。
言い方を変えれば、塾から何か持って帰ろうする子より、塾に何かを置いてゆこうとするこの方が人間として伸びるのである。
周囲が、世間が、放っておかない子…私はそういう子を育てたい。
この子の加入は大きい。